2023年2月現在。依然、Raspberry Pi 4の入手が難しい現在ですが。
Raspberry Pi 4の登場が、2019年9月頃。およそ3年半経過しようとしています。
世界を見渡してみますと、シングルボード・コンピュータ(SBC)の進化は続いているようです。
Raspberry Pi 4が入手できる価格帯で、最新モデルを探してみますと、2023年現在、どのような性能のSBCを入手できるのでしょう?
という疑問から、Orange Pi 5を入手してみました。箱が潰れているのは、シンガポールから輸送中の船便あるあるです。(浸水しなかっただけマシ
2022年秋~冬に発売された、Orange Pi 5を少し観察してみたいと思います。
目次
Orange Pi 5とRaspberry Pi 4の仕様比較
http://www.orangepi.org/html/hardWare/computerAndMicrocontrollers/details/Orange-Pi-5.html
メモリー容量の違いで複数のモデルがありますが、入手したモデルは16GBになります。2022年12月に発注し、本体+電源アダプタで、価格は税込・送料込\18,631でした。※海外サイトでドルで購入しましたので、価格は円相場に影響を受けます。あくまでも筆者入手時の参考価格です。
同じ価格帯のRaspberry Pi 4は4GBモデルになりますでしょうか。
スペックを比較してみましょう。
Raspberry Pi 4 Model Bのスペック
- SoC: Broadcom BCM2711
- CPU: ARM Cortex-A72 1.5 GHz クアッド(4)コア ARM Cortex-A
- GPU: Broadcom VideoCore VI Dual Core 500MHz OpenGL ES 3.0
- RAM: LPDDR4 SDRAM 1/2/4/8 GB
- USB: 2.0ポート x2 3.0ポートx2
- Ethernet: 1× 1 Gbps, 2.4GHz and 5GHz IEEE 802.11.b/g/n/ac wireless LAN, Bluetooth 5.0, BLE
- ストレージ: microSDカードスロット
シングルボードコンピュータと言えば?2019年秋登場の、SBC代表と言える存在です。
Orange Pi 5のスペック
- SoC: Rockchip RK3588S
- CPU: ARM quad-core A76+quad-core A55 2.4GHz オクタ(8)コア A76クアッドコア+A55クアッドコア
- GPU: ARM Mali-G610 GPU OpenGL ES1.1/2.0/3.2, OpenCL 2.2 and Vulkan 1.2
- NPU: 6 TOPS, supports INT4/INT8/INT16 mixed operation
- RAM: 4GB/8GB/16GB /32GB(LPDDR4/4x)
- USB: 2.0 x 1, 3.0 x 1, Type-C(USB 3.1) x 1
- Ethernet: 1× 1 Gbps
- ストレージ: M.2 M-KEYソケット、microSDカードスロット
発売時期が明確では無いのですが、2022年の秋~冬頃かなと思います。
3年間の進化を考察
3年間の進化を、2つのSBCのスペックの差分という形で見てみましょう。
- CPUはクアッド(4)コア→オクタ(8)コアに倍増、動作クロック1.5→2.4GHz
- GPUはOpenGL ES 3.2に対応
- NPU~Neural network Processing Unit、人工知能向けの演算回路を搭載
- RAM: 最大8GB→32GBが選択可能
- USB: Type-C(USB 3.1)搭載
- ストレージ: M.2 SSDを直接搭載可能
まずはCPUですが。コア数は倍増しています。Coretex-A72の4コアから、Coretex-A76へ更新されて、さらにCoretex-A55コアが追加されています。A72→A76の更新による性能向上に加えて、動作クロックも上がっています。
RAM容量は4倍になりました。最大容量も4倍ですが、同じ価格帯で4倍=16GBの容量が入手できました。
GPUのOpenGL ES 3.2対応は、WindowsのDirect3D 10で導入されたジオメトリシェーダーやテッセレーションシェーダー等が搭載されているようです。Wikiの該当ページはこちらになります。
またGPUとは別に、SoC内にNPUが搭載されています。AI関連の演算回路ということで、AI対応のアプリケーションや、エッジデバイスとしてのAI関連処理等に利用可能かと思います。
USB端子は、増える/Type-C化の流れのようです。今後はType-Cで統一されてゆく感じでしょうか。
最後にストレージにつきましては、大きな変化があります。M.2規格のNVMe対応SSDが直接搭載できるようになりました。ボードの裏側、このような感じです。取付可能なM.2の規格ですが、Type 2242または2230になります。幅22ミリ、長さ42ミリ。Windows PC用に一般的には使用されないサイズですが、入手は可能です。写真のSSDは台湾のメーカーのSSDになります。
Wi-FiとBluetoothですが、Orange Pi 5本体には搭載されていません。代わりに拡張M.2 M-KEYソケットを使用して、Wi-Fi6 + BT5.0モジュールを搭載可能になりました。別売です。日本国内では技適が必要のため、購入して取り付けることは出来ないと思いますので、ネットワークへの接続は有線LANで使用するかたちになります。
以上のように、CPU、GPU、ストレージ等すべてのコンポーネントそれぞれについて、確実にパワーアップしている感じがします。
選択可能なOS
ダウンロードページを拝見しますと。
Orange Pi OS(Android)のほか、LinuxはUbuntu、Debian、Armbianが選択可能のようです。(Android ImageはOrane Pi OSの原形で、Orange Pi OSが包括しています)
それぞれmicroSDカード用のイメージと、SSD用のイメージが存在し、microSDカードまたはSSDから起動が可能のようです。
起動用のイメージの作成に、少々癖があるようです。User Manualをダウンロードして内容を確認しながら起動用メディアを作成しないと、正しく起動しませんでした。
私が最初に起動できたのは、microSDカードのUbuntuになります。(Orange Pi OSは苦戦中→SSDから直接起動できました
Ubuntu 22.04.1 LTS Jammy Jellyfishが快適に動作
容量32GBのmicroSDカードに、Ubuntuイメージを書き込んで起動してみました。
ダウンロードしたUbuntuのバージョンは、Ubuntu 22.04.1 LTS Jammy Jellyfish、長期サポート(LTS)版の最新のUbuntuになります。
メニューの日本語化も全く問題ありませんでした。Ubuntu標準の各種アプリケーションもインストールされています。microSDカード起動ということで、動作が遅いのかなと思っていましたが。
同じmicroSDカード起動のRaspberry Pi 4 Model BやJetson Nanoと比較すると、Orange Pi 5の動作は快適だと思います。
素晴らしい!
以上のような感じで。ざっくりOrange Pi 5でUbuntuを起動してみました。
microSDカード起動にもかかわらず、動作が快適と感じたのは、メモリー容量は16GBであることと、オクタ(8)コアの恩恵であるように思えます。
SSD起動にした場合、より動作は高速に、そしてmicroSDカードよりも長期間壊れず安定して運用でき、さらにTB単位の大容量を扱うことができます。
正直、Jetson NanoやRaspberry Pi 4 Model Bを、デスクトップPCとして使用するのは厳しいな、と私は思っていました。まあSBCだから仕方がないかな、という諦めのようなものがありました。
一方、Orange Pi 5は、そのような感覚は無く。あれ?高スペックのPCくらいに、快適に使えちゃうのかも?という期待を持てる感じがしました。
大容量のストレージを接続して、サーバとして使用することも可能ですが。エッジデバイス、PC代わりのデバイス、その他用途がさらに広がるデバイスとして、シングルボードコンピュータは確実に進化しているようです。
今度は別のOSをSSDから起動して、様子を見てみたいと思います。
※23.2.14追記:UbuntuをSSD起動しました。microSDカード起動時のプチフリーズはなくなりました。SSDは起動後10秒かからずにデスクトップが表示されました。確実に高速です!
※23.2.19追記:Android 12もSSDから直接起動できました。microSDカードやeMMCと異なり、容量不足でアプリを消す必要は無く、動作速度もワンランク上がった印象です。
ちなみにAmazonさんのOrange Pi 5はお値段の桁が1つ多いため、ご注意下さい!