Tinker Board 2Sの初期設定覚書

2023年5月現在。Raspberry Piの入手が難しい状況が続いていますが。

国内で比較的入手が容易なシングルボードコンピュータとして、ASUSさんのTinker Boardシリーズが挙げられます。

かなり前に購入して、眠らせていたTinker Board 2Sを動かしてみました。

眠らせていた理由も記載しつつ。

セットアップ方法等を記録しておこうと思います。


Tinker Board 2Sについて

ASUSさんの公式ページはこちらになります。

Tinker Board 2シリーズは、Rockchip RK3399シリーズを搭載したシリーズ。

2SのSが付くモデルは、ストレージ(eMMC)を内蔵しています。

メモリーは2GBモデルと4GBモデルの2種類があります。

本体を購入すると、ヒートシンクとWi-Fiのアンテナが付属します。

Tinker Board 2Sを眠らせていた理由は、電源にあります。


電源電圧は12vから19V

かつコネクタは外形5.5mm/内径2.5mm

シングルボードコンピュータの多くは、5Vの電源を採用しています。電源コネクタはUSB Type-CまたはmicroBが多いと思います。電源容量は15W程度が一般的です。

一方、ASUS Tinker Board 2Sは、12-19Vの安定化電源を必要とします。電源容量は45W(よんじゅうごわっと!ということで、他のシングルボードコンピュータの電源は使用できません。

もしもTinker Board 2Sの購入を考えている場合、メモリーの容量と、電源アダプタの2点に注意しましょう。 ←極めて重要

本体購入時、ASUSさん純正の15V 3Aの電源アダプタを一緒に購入したほうが良いと思います。以下、純正ではない場合の苦労になります。


コネクタの変換アダプタを使用する場合は品質注意

Tinker Board 2Sで使用できる電源は、45Wクラスの、12Vから19Vの安定化電源ということになります。12Vや19Vの電源を使用できますが、15V 3Aクラスの安定化電源が良さそうです。これは入手が可能ですが、落とし穴がありました。

電源電圧が変わっている点に加えて、電源コネクタも特殊です。

国内で一般的に使用されている、外形5.5mm、内径2.1mmの電源プラグではなく。外形5.5mm、内径2.5mmコネクタの安定化電源が必要になります。

私は内径2.1mm→2.5mmの変換アダプタを使用しましたが。

どうも接触が良くないらしく、少しの振動で瞬断してしまい、本体がリセットされてしまいます。

別の変換アダプタを購入したところ問題ありませんでしたので、品質というより、相性の問題かもしれません。(どちらの直径が、TinkerBoardのコネクタの直径に近いか

画像の2つの変換アダプタのうち、右側は接触に問題なく使用できました。2.1と記載がある、こちらの製品になります。

なお、こちらのリンクは、製品の正常動作を保証するものではありません。あくまで、たまたま相性が良かった一例になります。

電源電圧が5Vの、他のシングルボードコンピュータは、GPIO端子から給電することが可能な機種があります。一方、TinkerBoardは、必ず本体の電源端子から給電する必要があるため、回避策が取れません。

電源の接触不良は、火災の危険があるため、放置できない問題です。トラブルが発生しないように、必ず相性の良いパーツを選択する必要がありますが、純正品の販売が終了している場合もあります。うーむ、困ったものです。

ちなみに、電源は必ずPSEマークの入った、「スイッチング電源」「安定化電源」を使用しましょう。(負荷を接続しても電圧が下がらない=安定化


Tinker Board 2SのeMMCドライブアクセス

Type-CケーブルでPCと接続

シングルボードコンピュータ用にmicroSDカードが必要、というケースもだんだん減ってきました。Tinker Board 2Sも、microSDカード無しで設定が可能のようです。

eMMCストレージを内蔵したTinker Board 2Sの場合、Type-CのUSBケーブルでPCと接続すると、eMMCストレージにアクセスが可能です。

Type-CケーブルでPCと接続し、Tinker Board 2Sの電源をONにすると、このような感じでストレージにアクセスが可能になります。

なにかドライバのインストール等は、特に必要ありませんでした。


Tinker OSのダウンロード

2023年5月現在。Tinker Board 2S用Tinker OSとして、Debian 10とAndroid 11が選択できるようです。

Tinker OS (Debian Buster)の書き込み

ダウンロードページから、Tinker Board 2シリーズ用のDebian Busterをダウンロードさせて頂きました。

ZIPファイル展開後、imgファイルをEtcherでeMMCへ書き込みます。

USB経由のeMMCドライブでも、書き込み先として、特に問題なく選択することができました。書き込み完了後、画面右下のUSBメディアアイコンを右クリック。「USB download gadgetの取り出し」を選択して、Tinker Board 2Sのストレージを取り出しました。

取り出し後、いちどTinker Board 2Sの電源を切ります。


Tinker OS (Debian Buster)の起動

Tinker Board本体に、キーボード・マウス、ディスプレイ、LANケーブルを接続して起動します。

HDMI端子は、miniやMicroではない通常の端子のため、一般的なケーブルでディスプレイに接続できそうです。またMIPI DSI端子にタッチスクリーン液晶を接続できる他、Type-C端子がDP Alt Mode対応のため、DP対応ディスプレイも接続可能のようです。

ここではHDMI端子でディスプレイに接続しました。

初回起動時は、他のシングルボードコンピュータ同様、ルートパーティションの拡張等の初期設定が行われるため、起動に時間がかかります。しばらく待っていると、デスクトップが表示されます。

画面右上にWi-Fiの通知が表示されました。Tinker  Boardは技適対応のため、Wi-Fiは問題なく使用することができます。2023年5月現在。Debian 11がリリースされています。一つ前のバージョンの、Debian 10がベースになります。

そもそも、Tinker Board 2登場時はDebian 9とAndroid 10の組み合わせでした。その後、Debian 10とAndroid 11がサポートされました。

最新ではありませんが、長年のサポートがありますので、動作の安定度については期待できそうです。


Tinker OS(Debian Buster)の日本語化手順

タイムゾーン変更

タイムゾーンの変更は、左下メニュー→Preferences→Time and Dateから行いました。

アンロックボタンを押すと、パスワードを聞かれます。ユーザ名linaroと同じ、パスワード「linaro」を入力します。

Time zone欄は「Asia/Tokyo」を選択します。

またインターネットで時刻を同期する場合、configuration欄を「Keep synchronized with Internet servers」に変更します。

以上でタイムゾーンの設定が完了しました。


キーボード配列変更

既定ではキーボードの配列が異なっており、数字とアルファベット以外の記号を正しく入力できませんでした。

左下メニュー→Preferences→Keyboard and Mouse・・・・からキーボードの配列を帰ることはできませんでした。あれ?

変更方法は、公式のスタートマニュアルに記載がありました。

sudo dpkg-reconfigure keyboard-configuration

画面の指示に従い、キーボードを選択します。

  1. そのままGeneric 105-key PC (intl.)
  2. Other
  3. Japanese
  4. Japanese
  5. The default for the keyboard layout
  6. No compose key
  7. Control+Alt+BackspaceでX Serverを終了するか:No

5番目はレイアウトの選択になります。キーボードのキーを入れ替えたい場合、目的に応じて選択してください。7番目は、コンソールでX Serverを使用する場合に影響があります。基本的にNoで問題無いと思います。キーボードの設定が終わりました。

再起動後、日本語キーボードで正しく記号の入力ができるようになりました。


Debian Busterの日本語化

次にロケールとメニューを日本語化したいと思います。

Tinker OSの公式ページに資料がなかったため、Debian Busterの公式ページを参考にしました。

既定ではC.UTF-8のようです。次のコマンドで言語を変更します。

sudo dpkg-reconfigure locales

ja_JP.UTF-8を選択し、スペースキーで*マークを付けました。 その後、TABキーで<ok>を選択します。

デフォルトのロケールを選択します。ja_JP.UTF-8をデフォルトにしてみました。

<ok>でPackage configurationアプリを終了します。

Debianを再起動すると、日本語環境に切り替わりますが。

再起動後、デスクトップやダウンロード等のフォルダ名を日本語にするかどうか、選択画面が表示されます。

私は「次回から表示しない」をチェック後、「古い名前のままにする」を選択しました。

このような感じで、メニューが日本語化されました。


日本語入力環境のインストール

平仮名や漢字を入力できるように、もずくさんをインストールさせて頂きましょう。

sudo apt install -y ibus-mozc im-config

インストール後、X Window Systemを再起動します。

再起動後、画面右下に「あ」のアイコンが表示されるようになりました。

入力モードのメニューから、直接入力ではなく「ひらがな」に変更しました。

以上でCTL+スペースキーで、「あ」の日本語入力モードと「JA」のアルファベットの直接入力モードを切り替えて、日本語を入力できる環境が整いました。


PiBenchmarksを動かしてみました

動作速度はどのくらいなのか?ベンチマークを動かしてみました。

確かにTinker Boared 2SのDebian Buster環境にて。

実行はこちらのコマンドになります。

sudo curl https://raw.githubusercontent.com/TheRemote/PiBenchmarks/master/Storage.sh | sudo bash

結果はこのような感じです。

eMMC起動ということで、microSDカードで起動したときのプチフリーズはなく、快適に動作します。

Tinker Board 2S(2GB)のスコアは6,015でした。

SSD起動したRaspberry Pi 4(4GB)のスコア7,400には及びませんが、Tinker Board 2SをSSD起動すれば、7,400を超える可能性もあります。

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Tinker Board 2SはUSBバスパワーの2.5インチHDDを接続可能

前述の通り、Tinker Board 2Sは、45Wの電源容量を必要とします。

通常の5V電源のシングルボードコンピュータは15W程度の電源容量のため、3倍の供給が可能ということになります。

ということで、2.5インチのHDDを取り付けてみました。

他のシングルボードコンピュータでは、正常に動作せず、動作が不安定になりますが。

Tinker Board 2Sの場合はどうでしょうか?

結果は、画像のように2.5インチHDDをTinker Board 2Sに直接接続しても、問題なく動作する感じでした。

コンセント1つ(Tinker Board 2S用)のみで、なにかサーバ等を作りたい場合は、こちらの方法でHDDを接続するのも良いかもしれません。


以上のような感じで、Tinker Board 2Sで遊んでみました。

電源の問題、電圧とコネクタの2つが解決すれば、とても快適に使用できるシングルボードコンピュータであることがわかりました。

性能も十分で、6コアのCPUを搭載しており、メモリーも2GBモデルと4GBモデルを選択することができます。

またeMMCを内蔵した2Sの場合、microSDカード不要で動かせるのは、性能面・運用面ともに大変良いと思います。

ご興味が御座いましたら、ぜひ動かしてみてください。

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コメント

  1. まさ より:

    パソコンDOSなどは出来ない素人です。
    TinkerBoard2SにAndroidをインストールして使っていましたが、
    TinkerBoard2SのeMMCがWindowsのディスクの管理で確認出来なくなりました。確認する方法が何か方法はありませんか?

    • hide より:

      こんばんは コメント頂きまして 誠にありがとうございます。

      TinkerBoard2SのeMMCが WindowsPCから認識しなくなったとのお話

      問題がTinkerBoard側か Windows PC側かの切り分けが必要かと思います。

      まずはTinkerBoard側ですが、公式フォーラムに関連する投稿があるようです。
      Can not get access to eMMC from PC
      ざっと拝見すると、TinkerBoard側は(故障以外は)何かeMMCが見えなくなる要因はなく、Windows PC側を点検する内容のようです。

      投稿の下の方に、microsoftのフォーラムへのリンクがあります。
      こちらは、Windows PC側の問題解決方法のようです。
      Windows PCの不調でeMMCドライブが見えなくなる場合、「Sfc /scannow」や「DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth」等のコマンドで、破損したWindowsを復旧するような内容です。

      私個人の経験で、TnkerBoardではありませんが、Windows PCでUSBフラッシュドライブが見えなくなる場合がありました。
      その場合、PC側で使用するUSBの端子を変えると認識する場合がありました。
      どうも端子ごとにドライバが記憶(キャッシュ)されていて、そちらが不調になると見えなくなります。
      https://denor.jp/wp-content/uploads/2023/10/t01.pngデバイスマネージャーのTnker UMS USBデバイス
      こちらの図は、デバイスマネージャー→メニュー→表示→「非表示のデバイスの表示」を選択したものです。
      ASUS Tinker~が2つありますが、アイコンが薄い色になっています。2回、別のUSB端子に接続した名残かと思います。
      このアイコンを右クリックして、削除してから、USBメモリーを差し直してみる、という手もあります。

      何か解決のヒントになりますでしょうか?

      • まさ より:

        ありがとうございます。
        町のパソコン屋に行っても分からず、お手上げです。
        マイクロsdカードにAndroidインストールして動くかテストしてみます。