アクティブクーリングとパッシブクーリングの違いは

近年、シングルボードコンピュータの性能が上がり。

排熱を考える必要性が出てきてしまいました。

シングルボードコンピュータの心臓部とも言えるSoCや、電源管理(PM)用のチップ(IC)である、PMICを適切に冷却する必要があります。

何らかの冷却システムを取り付ける必要がありますが。

アクティブ冷却?パッシブ冷却?

それって、具体的にどう違うのでしょうか?そのあたりの覚書になります。


シングルボードコンピュータの冷却システム

シングルボードコンピュータのどこを冷却すれば良いのか

シングルボードコンピュータには、様々なIC(チップと表記します)が搭載されています。

SoCだけ冷やせば良い、というのはどうかと思います。具体的に、このあたりを考慮する必要があります。

  1. Soc(CPUと周辺チップをワンチップ化したもの)
  2. メモリーチップ
  3. 電源管理チップ(PMIC)
  4. Ethernetコントローラ(LAN)
  5. USBコントローラー・USBハブ
  6. PCI-expressコントローラー

この中で、クロック数の大きいものと、大電流を扱うものが、発熱が心配なものになります。

近年、2.5Gbps対応のEthernetに対応したシングルボードコンピュータが発売されています。冒頭の写真のOrange Pi 5 Plusが実際にそうです。またUSB端子も、電気を信号として扱うだけではなく、動力源として扱う=数十ワットの大きな電力を供給できるため、コントローラーに大きな電流が流れます。

  • クロック数が大きいもの = 電気を信号(シグナル)として扱う範疇
    • SoC
    • メモリー
    • Ethernetコントローラー
    • PCI-expressコントローラー
  • 大電流を扱うもの = 電気を信号として扱う+さらに動力源(パワー)として扱うもの
    • 電源管理PMIC
    • USBコントローラー

Ethernetに関しては、今後、より速度の速い5Gbps、10Gbps対応のシングルボードコンピュータが発売される可能性が十分あります。メモリーも同様に、高速・大容量のメモリーが採用されるでしょうし、USBやPCI expressも高速化が進んでいます。

シングルボードコンピュータの場合、搭載されているチップのほとんどが、今後より発熱が大きくなってゆくのではないでしょうか。

正直、SoCだけ冷やせば良い。の場合、安全装置が働いて、LANやUSBの速度が低下する可能性もあるのでは?と考えています。


パッシブ冷却システムは熱を移動させて拡散させるもの

パッシブ=受動的な冷却方式になります。次の特徴があります。

  • 複数の熱源の熱をまとめる、さらに大きな容量(体積)に熱を拡散させる。
  • 熱を空気中に「自然に」上に飛ばすイメージ。
  • ヒートパイプや液冷等も含めて、熱を移動・拡散させる工夫=パッシブ系
  • ファンが無い=動力源が不要。音が静か。
  • 大きな容量(体積)が必要になるため、密集は難しい。

大きなヒートシンクの他に、ヒートパイプや液冷システムなど、熱を移動させるイメージのものが、パッシブ系の冷却システムになります。


アクティブ冷却システムは強制的に排熱するもの

対するアクティブ系は、能動的な冷却方式になります。

  • 強い(速い)空気の流れで強制的に排熱するシステム。
  • 熱を空気や液体に「強制的に」飛ばす・冷やすイメージ。
  • 小さいヒートシンクに大量の空気を当てる=アクティブ系
  • ファンが必要=動力源が必要。音はね。仕方がないよね。
  • たくさんの熱源を、小さな容量(体積)に密集させることが可能。
  • オーバークロック等、より大きな性能を引き出すために、液体窒素等で強制的に冷やすのもアクティブ冷却。
  • 水をポンプで強制的に循環させる水冷PCも。

データセンターのラックマウント等、狭い場所に沢山の熱源を詰め込みたい場合。

自然に任せた冷却は難しく、強制的な排熱システムが必要になります。

つまり、密集させる要件がある場合は、アクティブ系の冷却システムでなければ、構成が難しいと言えます。

ファンの動力~電気代がかかるほか、どうしても音が発生します。

ファンがオーバースペックの場合、電気代がもったいない&地球に優しくない、という問題も出ますので、設計や管理にも気をつけたほうが良さそうです。


シングルボードコンピュータでも電源と排熱に注意が必要

小さいし、発熱も大したことないと思ったら大間違いです。

以前、Raspberry Pi 4でKubernetesクラスタを作成した際、放熱を甘く見て、カッターマットが変形した事例があります。

Raspberry Piクラスタは放熱注意クラスタケース必須です
先日構築した、Raspberry Pi 4 + USBスティックSSD + Fedora CoreOSクラスタですが。カッターマットの上に置...

さらに。Raspberry Pi 5のPD電源アダプタは、スイッチングにGaN(窒化ガリウム)を使用しています。

以前、品質の悪いGaNのPD電源アダプタが壊れて、充電していたiPhone Xの本体を壊した経験があります。

機器の故障で済みましたが、場合によっては発火・火災につながる可能性もあります。

シングルボードコンピュータに熱がこもると、安全装置が働きますが。その際、電源アダプタに負荷がかかる場合があります。電源アダプタの故障から、最悪は火災の危険性もあります。

使用する電源アダプタも、品質が保証された、信頼できものを必ず使用しましょう。


シングルボードコンピュータの性能が向上し。

より高クロック・大電流を扱える製品が増えてきました。

性能を十分に引き出すには、冷却システムの導入が必ず必要になってきました。

また発熱による影響も考えられるため、設置場所なども工夫したほうが良いように思えます。(熱がこもらず風通しが良い場所など

使用する電源アダプタも大きな電力を扱うものとなり、品質が高く、信頼できるものを選ばないと、機器の故障にとどまらず、発火や火災の心配もあります。

このあたりに十分に注意しながら。シングルボードコンピュータの進化を楽しみたいですね。

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