近年、シングルボードコンピュータの性能が上がり。
排熱を考える必要性が出てきてしまいました。
シングルボードコンピュータの心臓部とも言えるSoCや、電源管理(PM)用のチップ(IC)である、PMICを適切に冷却する必要があります。
何らかの冷却システムを取り付ける必要がありますが。
アクティブ冷却?パッシブ冷却?
それって、具体的にどう違うのでしょうか?そのあたりの覚書になります。
目次
シングルボードコンピュータの冷却システム
シングルボードコンピュータのどこを冷却すれば良いのか
シングルボードコンピュータには、様々なIC(チップと表記します)が搭載されています。
SoCだけ冷やせば良い、というのはどうかと思います。具体的に、このあたりを考慮する必要があります。
- Soc(CPUと周辺チップをワンチップ化したもの)
- メモリーチップ
- 電源管理チップ(PMIC)
- Ethernetコントローラ(LAN)
- USBコントローラー・USBハブ
- PCI-expressコントローラー
この中で、クロック数の大きいものと、大電流を扱うものが、発熱が心配なものになります。
近年、2.5Gbps対応のEthernetに対応したシングルボードコンピュータが発売されています。冒頭の写真のOrange Pi 5 Plusが実際にそうです。またUSB端子も、電気を信号として扱うだけではなく、動力源として扱う=数十ワットの大きな電力を供給できるため、コントローラーに大きな電流が流れます。
- クロック数が大きいもの = 電気を信号(シグナル)として扱う範疇
- SoC
- メモリー
- Ethernetコントローラー
- PCI-expressコントローラー
- 大電流を扱うもの = 電気を信号として扱う+さらに動力源(パワー)として扱うもの
- 電源管理PMIC
- USBコントローラー
Ethernetに関しては、今後、より速度の速い5Gbps、10Gbps対応のシングルボードコンピュータが発売される可能性が十分あります。メモリーも同様に、高速・大容量のメモリーが採用されるでしょうし、USBやPCI expressも高速化が進んでいます。
シングルボードコンピュータの場合、搭載されているチップのほとんどが、今後より発熱が大きくなってゆくのではないでしょうか。
正直、SoCだけ冷やせば良い。の場合、安全装置が働いて、LANやUSBの速度が低下する可能性もあるのでは?と考えています。
パッシブ冷却システムは熱を移動させて拡散させるもの
パッシブ=受動的な冷却方式になります。次の特徴があります。
- 複数の熱源の熱をまとめる、さらに大きな容量(体積)に熱を拡散させる。
- 熱を空気中に「自然に」上に飛ばすイメージ。
- ヒートパイプや液冷等も含めて、熱を移動・拡散させる工夫=パッシブ系
- ファンが無い=動力源が不要。音が静か。
- 大きな容量(体積)が必要になるため、密集は難しい。
大きなヒートシンクの他に、ヒートパイプや液冷システムなど、熱を移動させるイメージのものが、パッシブ系の冷却システムになります。
アクティブ冷却システムは強制的に排熱するもの
対するアクティブ系は、能動的な冷却方式になります。
- 強い(速い)空気の流れで強制的に排熱するシステム。
- 熱を空気や液体に「強制的に」飛ばす・冷やすイメージ。
- 小さいヒートシンクに大量の空気を当てる=アクティブ系
- ファンが必要=動力源が必要。音はね。仕方がないよね。
- たくさんの熱源を、小さな容量(体積)に密集させることが可能。
- オーバークロック等、より大きな性能を引き出すために、液体窒素等で強制的に冷やすのもアクティブ冷却。
- 水をポンプで強制的に循環させる水冷PCも。
データセンターのラックマウント等、狭い場所に沢山の熱源を詰め込みたい場合。
自然に任せた冷却は難しく、強制的な排熱システムが必要になります。
つまり、密集させる要件がある場合は、アクティブ系の冷却システムでなければ、構成が難しいと言えます。
ファンの動力~電気代がかかるほか、どうしても音が発生します。
ファンがオーバースペックの場合、電気代がもったいない&地球に優しくない、という問題も出ますので、設計や管理にも気をつけたほうが良さそうです。
シングルボードコンピュータでも電源と排熱に注意が必要
小さいし、発熱も大したことないと思ったら大間違いです。
以前、Raspberry Pi 4でKubernetesクラスタを作成した際、放熱を甘く見て、カッターマットが変形した事例があります。
さらに。Raspberry Pi 5のPD電源アダプタは、スイッチングにGaN(窒化ガリウム)を使用しています。
以前、品質の悪いGaNのPD電源アダプタが壊れて、充電していたiPhone Xの本体を壊した経験があります。
機器の故障で済みましたが、場合によっては発火・火災につながる可能性もあります。
シングルボードコンピュータに熱がこもると、安全装置が働きますが。その際、電源アダプタに負荷がかかる場合があります。電源アダプタの故障から、最悪は火災の危険性もあります。
使用する電源アダプタも、品質が保証された、信頼できものを必ず使用しましょう。
シングルボードコンピュータの性能が向上し。
より高クロック・大電流を扱える製品が増えてきました。
性能を十分に引き出すには、冷却システムの導入が必ず必要になってきました。
また発熱による影響も考えられるため、設置場所なども工夫したほうが良いように思えます。(熱がこもらず風通しが良い場所など
使用する電源アダプタも大きな電力を扱うものとなり、品質が高く、信頼できるものを選ばないと、機器の故障にとどまらず、発火や火災の心配もあります。
このあたりに十分に注意しながら。シングルボードコンピュータの進化を楽しみたいですね。