Tinker Board 2Sに、USB外付けHDDとチューナを取り付けて、視聴・録画環境を作成してみました。
シングルボードコンピュータで視聴環境を作る場合は、Raspberry Piを使用すると、作成の難易度が低いのは確かです。
では、他のシングルボードコンピュータで作るのは?と申しますと。難易度が高いのですが、問題なく作成することが可能です。
このあたり、なぜ難易度が違うのかを整理させて頂こうと思います。
目次
シングルボードコンピュータで地デジ視聴・録画環境を作る場合のポイント整理
Raspberry Pi 4の作成難易度が低い理由
ずばり、次の理由から、地デジ視聴環境を簡単に作ることができます。- USBチューナドライバがRaspberry Pi OSに予め組み込まれている。
- USB端子が多い。
- しかし電源供給能力が弱く、それは弱点
- メモリー搭載量4GB。コンパイル等が行いやすい。
- その他、ffmpegやauofs等の必要なプログラム・ドライバを導入しやすい。
もしも、他のシングルボードコンピュータで地デジ視聴環境を作る場合は、この4点がポイントとなり、なにか工夫する必要が出る場合があります。(後述
最大のポイントは、Raspberry Pi OSにUSBチューナのドライバが入っている、autofsも入っているところでしょうか。
また性能、CPUパワー等についても、地デジ視聴・録画に必要な性能を満たしている、というのもポイントです。(Raspberry Pi 3や2では作れないと思います。
他のシングルボードコンピュータで地デジ視聴環境を作る場合のポイント
先程の4点をなんとかすれば、他のシングルボードコンピュータでも地デジ視聴環境を作ることは可能です。次の2台にて、実際に環境を構築できました。- Tinker Board 2S
- NanoPi M4V2
その構築のコツは下記になります。
USBチューナドライバの導入
お使いのシングルボードコンピュータ・OSバージョンに適合するカーネルのソースから、カーネルをコンパイルすることで、USBチューナドライバを導入することができます。
Tinker Boardの場合、本体にてカーネルのコンパイル環境を作成し、コンパイルが可能です。
NanoPi/NanoPCの場合、クロスコンパイル環境を用意する必要があります。通常のWindows 10 PCにて環境を構築することができます。
チューナーを使用する場合は、カーネルのコンフィグ時に、次の2つのドライバを有効にします。
- Digital TV Support
- Siano SMS1 xxx based MDTV receiver
このあたりの詳細は、Tinker Board 2Sのカーネルコンパイルの記事に画面キャプチャが御座います。
カーネルのコンパイルは、手順を間違えるとシングルボードコンピュータが起動しなくなるため、最悪の場合はOSの再インストールが必要になります。正直、リスクがあります。
前述の記事は、実際にUSBチューナのドライバをコンパイルして、新しいカーネルで起動、チューナが使用できるところまで、実際に試してあります。
手順の信頼性は高いと思います。
USBの給電能力の確認
USBについては、新しいシングルボードコンピュータのほうが利点が多いです。
Tinker Board 2Sの場合、USB Type-A端子が3つ、Type-C端子が1つあります。Type-A端子は0.9A、Type-C端子は1.5Aの給電が可能です。
お勧めは、Type-C端子にSSDまたはHDDを接続、チューナとカードリーダー、チューナーの増幅器用電源を、Type-A端子に接続します。あとは、コンセントとLANケーブル、アンテナ線を接続すれば、地デジの視聴が可能になります。
NanoPC T6等、Raspberry Pi 4よりも後に発売されたシングルボードコンピュータは、電源容量が大きい機種があります。大容量のストレージを接続したい、SSDを使用したいという場合でも、安定して動作すると思います。
メモリー容量4GB未満はswap必須
シングルボードコンピュータで地デジ視聴・録画環境を作る場合は、メモリー容量は最低でも2GBは必要だと思います。
注意点は、環境の構築時、ソースのコンパイルやイメージのビルドを行う場合に、メモリー容量2GBは足りません。
メモリー容量2GBのTinker Board 2Sで、EPGStationのコンパイルは最初できませんでした。必ず途中でフリーズしてしまいました。
解決策ですが、swapを作成したところ、コンパイルが最後まで行えるようになりました。
手順はこちらの記事になります。
メモリー容量が4GBに達していないシングルボードコンピュータを使用する場合は、必ずswapを作成してから、構築を行いましょう。
ffmpegやautofsを予め確認
ffmpegについては、多くのシングルボードコンピュータのディストリビューションで、問題なく導入できる場合が多いと思います。
しかしインストールされる場所やバージョンが異なるため、設定時に注意が必要です。
ストレージのマウントは、autofsの使用をお勧めします。
理由ですが。
- autofsなしでマウント→ストレージを取り付けておかないと起動しない。
- autofsありでマウント→ストレージがなくても起動する。
シングルボードコンピュータを再起動したい場合、autofsが有効の場合、必ず起動します。autofsを使用しない場合は、ストレージの調子が悪いと再起動に失敗します。
autofsのタイムアウトを0秒に設定すると、常にマウントされた状態になります。地デジの録画にストレージを使用する場合は、タイムアウトを0にしておけば遅延がなくなります。
地デジ録画の目的でUSBストレージを使用する場合は、HDD,SSDに関わらず、timeout=0でautofsでマウントしたほうが、トラブルは起きにくいと思います。
ちなみに、Tinker Board 2Sは、autofsが既定で使用できません。カーネルの再コンパイル時に、autofsを有効にすることで使用可能になります。
Raspberry Pi 4以外のシングルボードコンピュータで地デジ録画環境を作成してみると。
Raspberry Pi 4は、ドライバやメモリーの搭載量等、恵まれた環境であると気づきます。
一方、USBの電源容量が少なく機器の構成が複雑になったり、ハードウェアエンコード機能が使用しづらかったりと、弱点も存在します。
ハードウェアエンコードについては、新しい機種のほうが、性能や画質でRaspberry Pi 4に勝る可能性があります。またUSBの電源容量も、新しい機種のほうが恵まれていると思います。
もしも録画環境を更新する機会がありましたら、Raspberry Pi 4ではなく、別のシングルボードコンピュータを選択してみてはいかがでしょうか。